医師を離れたあとに
見えたこと――
自分の体を大切にする
という選択わたしのキャリア編集室
― 女性医師の働き方ラジオ ―
女性医局のポッドキャスト『わたしのキャリア編集室 ― 女性医師の働き方ラジオ ―』は、女性医師の先生方が、それぞれの人生に合わせて働き方を整えていく姿を、言葉でたどる番組です。
DJは、女性医局のタラ・恵。今回も引き続き、血液内科を専門とし、その後は一般内科も経験されたさくらさんにお話を伺います。
第3回では、離島での子育て、体調不良、そして仕事から少しずつ距離を置いていった経緯を振り返りながら、「続けること」だけではないキャリアのあり方について考えていきます。
医師を辞める、というはっきりした決断があったのでしょうか。
実は、辞めると決めた感じではなかったんです。子どもが三人続いて生まれて、そのあと離島に移ったんですね。自分たちだけで育てるのは難しいと思って、自然の多いところで子育てをしようと考えたんです。ただ、そこに七年くらいいるうちに、今度は上の子の学校のことを考えなければいけなくなって。選択肢も少なかったので、もう少し教育環境のある場所へと思って九州に移りました。そのとき、また仕事を探すつもりではいたんですが、ちょうど自分の体調がかなり悪くなってしまって。胃が痛くなったり、吐いてしまったり、食べられなかったりすることが何度もあって、一時はかなり痩せてしまいました。それが月に一回くらいのペースで何度も続いて、「今は働けない」と思ったんです。そうこうするうちに、主人が単身赴任のような形になって、一人で三人の子どもを見る時期もあり、そのまま今に至るという感じです。
選んだというより、状況の積み重ねだったんですね。
そうですね。自分で「もう辞めます」と区切ったというより、そういう状況の中で、戻らないまま時間が過ぎていった感じです。
後ろ髪を引かれるような思いはありましたか。
ありますね。もし今これで四十歳くらいだったら、もう一度専門医を取ろうと思ったかもしれません。実際、六~七年前に専門医を取ろうとして勉強していた時期があったんです。でもコロナで試験が延期になって、それが何度か続いて。だんだん勉強し続けるのもしんどくなってきて、気づいたら年齢も上がっていて、「もういいかな」と思うようになっていました。
年齢や家庭環境、そしてコロナも重なったんですね。
そうですね。あのとき予定通り進んでいたら、また違ったかもしれません。でも、こういうふうに、自分の中の「医療として上を目指していこう」という気持ちが年齢とともに変わっていくんだ、というのは、自分でも意外でした。
今は、医療からは少し距離を置いた生活なんですね。
はい。今は基本的には子ども中心の生活です。ただ、専門医の更新のために単位を取る必要があるので、動画を見て単位を取るなど、最低限のところは続けています。次の更新まではいけそうですが、その次はもうしないかもしれない、という気持ちもあります。
今の生活になって、気持ちの面で変わったことはありますか。
すごく大きいのは、自分で時間をコントロールできることですね。仕事をしていた頃、特に関東に出て最初の一年目が一番つらかったんですが、本当に自分の時間が全くコントロールできませんでした。当直では寝られないし、当直で入院になった患者さんがそのまま自分の担当になる。翌日は元々の患者さんに加えて、新しく重症の患者さんも増える。一人で三十人以上診ていた時期もあって、病棟も分かれていて、誰に会ったか分からなくなるくらい忙しかったです。その頃に比べると、子ども三人を見ることの大変さも、「あの時よりはまだコントロールできる」と思えるところがありました。
壮絶ですね……。でもその経験が、今を支える強さにもなっているんでしょうか。
そうかもしれません。大変だったけれど、あの時期があったからこそ、今の生活の大変さを別の角度から受け止められている気がします。
最後に、今これを読んでいる方に伝えたいことがあればお願いします。
今の臨床研修制度は、私はすごくいい制度だと思っています。若いうちに幅広く経験できることは本当に大きいですし、その時期にどれだけ知識を入れられるかはとても大事だと思います。ただ、結婚や出産のタイミングとも重なってくるので、本当に難しいですよね。学生時代は、男性医師に負けないように女性医師がどう働くか、という話をしていたこともありました。でも実際に働き始めると、やっぱり男性と同じようには働けない部分がある。体力のこともあるし、家庭の中で担うこともあるからです。だからこそ、自分の体を大切にしてほしいと思います。そして、しっかり夜に眠ること。当直明けに寝るのではなく、夜にきちんと眠れることって、本当に大事だと思います。
今回は、さくらさんが医師としての仕事から少しずつ離れていった背景と、今の生活を通して見えてきたこと、そして後輩世代へのメッセージをお届けしました。
番組では、文章だけでは伝わりきらない空気感や声の温度も、そのままお届けしています。ぜひSpotifyで、さくらさんの生の声もお聞きください。
エピソードはこちらです:Spotify
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- 番組名
- わたしのキャリア編集室
― 女性医師の働き方ラジオ ―
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Tara恵(タラ・恵)
ポッドキャストのDJ・聞き手。インド在住。
女性医師一人ひとりの働き方や人生の転機に寄り添い、その言葉を丁寧に届けています。