出産を経験し子育てと両立しながら働いているママドクターにとって、新専門医制度が大きな不利になることが指摘されていることをご存知ですか?
新専門医制度は、専門医の質の向上を目的としており、専門医として働くために規定の研修を受けることが定められています。
しかし新専門医制度の研修と育児を両立するのはかなり難しいという声が挙がっているのです。
新専門医制度が女性医師にとって不利といわれる理由や、制度の問題点について考えていきます。
新専門医制度の概要と導入目的
かつての医療制度は、内科の専門医ならば内科学会、外科の専門医なら外科学会のようにそれぞれの診療科の学会で運用する認定プログラムにより専門医のライセンスを取得できるシステムでした。
しかし、この制度には各学会の専門医認定基準が統一されていないという問題点が指摘されていました。
専門研修後に専門医認定試験を受け、これに合格することで初めて独立した診療ができるのが新専門医制度です。
さらに高い専門性を目指したい医師は、3~10年のトレーニングを経てサブスペシャルティ専門医の称号を得ることができます。
新専門医制度と育児との両立はハード
新専門医制度にはプログラム制とカリキュラム制があります。
プログラム制には、研修のためにいくつかの関連病院に出向くシステムが取り入れられています。しかし、研修先は頻繁に変わるため、子育てと両立しながら研修を進めていくのはかなりハードです。
カリキュラム制の場合には研修年限は定められていません。
しかしプログラム制の年限を下回らないことが条件とされているため、研修にまとまった時間が必要なのはプログラム制と同じです。
女性医師の将来が閉ざされる可能性も
新専門医制度には、内科や外科などの19の基本領域と、消化器科やアレルギー科などのサブスペシャルティ領域によって成り立っています。
専門性に特化したサブスペシャルティ領域を目指すためのトレーニングは膨大で、女性医師が子育てと両立しながら続けていくのは不可能に近いという声が挙がっています。
専門医への道を諦める女性医師もいるのが現実
女性医師は、ライフイベントで仕事に制約を抱えやすいものです。
特に育児中はなかなか身動きが取れないため、学会参加や症例の確保ができない可能性が考えられます。
既に出産を経験し、子育てをしているママドクターは子どもの用事や突然の病気などに時間を取られることが多く、新専門医制度はかなりハードルが高いといえます。
このような懸念を受けて、新専門医制度には妊娠出産などで研修を中断しても、6ヶ月以内なら研修再開ができるという特例を示しています。
しかし、出産や育児との両立の困難さから希望の科を諦め別の科に転向したり、専門医取得を諦め学会を退会したりする女性医師が一定数いるというのが現状です。
医師の質を向上させるための新専門医制度が女性医師の将来を閉ざしてしまうことも懸念されます。
新専門医制度に関しては、制度の不備や日本専門医機構の対応の遅さも指摘されています。
制度の課題が指摘され議論が巻き起これば、よりよい姿を模索する動きが高まる余地はあるかもしれません。
理想的な働き方を実現させるためにも今後の動きを注視しておきたいですね。