病気の治療に欠かすことができない内服薬。これまでの治療では、「患者がしっかりと医師の指示に従い、処方された薬を服用すること」が大切であるとされてきました。
しかし、患者が正しく薬を服用して病状を改善していくためには、医師による服薬の指導だけではなく、患者本人の服薬に対する理解が必要です。
そこで近年は、“医師による服薬の管理=コンプライアンス”ではなく、“医師と患者の相互理解に基づいた服薬=アドヒアランス”が重視されるようになっています。
今回は、服薬アドヒアランス向上のために医師に求められる姿勢や、患者への指導のポイントについてお話します。
服薬アドヒアランスが重要視される理由
先ほどご紹介した通り、「服薬アドヒアランス」とは、医師だけではなく患者自身も治療方針の決定に参加し、しっかりと納得した上で服薬治療を行っていくことを指す言葉です。
医師による治療計画に患者が従う「コンプライアンス」重視の治療では、患者の薬に対する不信感などから正しい服薬が行われず、治療が思うように進まなかったり、病気が再発してしまったりすることが少なくありません。
患者自身が治療方針や服用する薬の決定に参加することは、薬の効果や副作用、治療における服薬の意義の理解に繋がります。病気の治療を成功させるためには、服薬アドヒアランスを向上させ、ただ医師の指導に従って服薬する受動的な治療ではなく、患者の自主的な服薬治療を促していくことが大切なのです。
服薬アドヒアランス向上のポイントは?
服薬アドヒアランスが低下してしまう原因としては、生活習慣の影響による薬の飲み忘れや、「症状が良くなったから」という自己判断での服薬の中止、副作用への心配や薬剤の説明不足などが挙げられます。特に自覚症状の少ない病気などは、「症状が出ていないのになぜ薬を飲み続けないといけないのか?」といった疑問から、医師や薬への不信感を抱きやすくなります。
これらを改善していくためには、患者としっかりと信頼関係を築き、それぞれの患者に合わせた服薬指導を行っていく必要があります。不規則な生活が理由で服薬を忘れがちな患者には予備の薬を携帯するようアドバイスをする、薬を飲んだかどうかを忘れてしまう高齢者には、家族からの声掛けやカレンダー等への記録を促すなど、ただ薬を飲むよう指導するのではなく、正しく服薬するための方法を一緒に考えていくことが大切です。
正しい服薬は通院治療の要といっても過言ではありません。治療を円滑に進めていけるよう、1人1人の患者と密にコミュニケーションをとり、現在の病状や治療計画、服薬の必要性といった情報をしっかりと共有していくよう心がけましょう。