他の職業に比べて圧倒的に“死”に触れる機会の多い医師という職業。死亡確認を行うため、患者と家族の別れの場面に立ち会うことも決して少なくありません。
しかし、医師が死亡確認の際にどう立ち振る舞えばよいのかを学ぶ機会は少なく、不安や戸惑いを感じている若手医師は数多くいます。
人の最期を看取り、別れの場に立ち会う上で、医師に求められる立ち振る舞いとはいったいどのようなものなのでしょうか。
死亡確認に臨む準備を
多くの場合、死亡確認を行う際は“対光反射の消失”“呼吸の停止”“心拍の停止”の3つの徴候を根拠に患者の死亡を確認します。
そのため、死亡確認の際には、瞳孔散大・対光反射の消失を確認するための「ペンライト」、心音・呼吸音を確認する「聴診器」、死亡診断時刻を確認するための「腕時計」を必ず準備しておかなくてはなりません。
近年はPHSやスマホの時計機能で死亡診断時刻を確認する医師もいるようですが、どうしても患者の家族に悪い印象を与えてしまいます。感染対策などで腕時計を身に着けていないという方も、死亡確認の際だけは腕時計を持参するようにしましょう。
もちろん、服装や髪などの身だしなみを確認し、最低限整えておくことも大切です。
残された家族への配慮
死亡確認の際に医師が対面するのは亡くなった患者だけではありません。身内の死を目の当たりにし、デリケートになっている患者の家族の気持ちも思いやった行動が求められます。忙しそうにする、大きな物音を立てる、過剰に大きな声で話すといった振る舞いは避け、丁寧で落ち着いた言動を心がけましょう。
また、死亡確認の前には患者と家族に向けて「確認させていただきます」と声をかけ、診断後は患者の布団や衣服を整えるなど、一連の流れが事務的な行動に見えないよう配慮しなければなりません。主治医ではない場合、自らのフルネームを伝えることも忘れないようにしてください。
家族に死亡を伝える際も、ただ淡々と伝えるのではなく、言葉を選んで伝えることが大切です。闘病の経過を知っている患者の場合には、家族が落ち着くのを待ってから「長い闘病お疲れ様でした」「ご家族の皆さまもご立派でした」と労いの言葉を伝えるのも良いでしょう。
日本では、人の死亡確認及び死亡診断書の作成は、医師と歯科医のみに行うことが許される非常に重要な業務とされています。
自分以外の医師がどのように死亡確認をしているのかはほとんど知る機会がないため、「自分が患者・家族だったら」と問いかけながら行動しなければなりません。
患者と家族の最後の時間に立ち会うのですから、ただ仕事をこなすのではなく、亡くなった患者への尊敬の念や、家族への労いの気持ちが表れる立ち振る舞いをすることが大切なのです。