都市部や市内に住む人々にとってはあまり馴染みがあるものではありませんが、山奥の小さな村や海に囲まれた小さな島に住む方にとっては、医療への不安がついてまわります。
緊急の病気や大きなケガがあったときには、小さな診療所に医師がいても設備不足や専門外などで十分な診察ができないことがあるのです。
そこで活躍してくれるのが、医療に関して総合的な知識や技術を持つ「プライマリケア医」です。今回は、長い間問題視されている「僻地医療」と「プライマリケア医」についてご紹介いたします。
僻地診療所・僻地医療とは?
交通の便が悪い山奥の村や島、人口が少ない小さな村などには大きな総合病院や大学病院などはありません。1名またはごく少人数の医師で何とかきりもりをしている診療所があるだけということも珍しくないのです。
そういった小さな診療所は「僻地診療所」と呼ばれており全国にいくつかありますが、そこで働く医師不足や医師への負担が問題視されています。
それと同時に、その僻地で暮らす住民の不安も募っており、救急の病気やケガが起こった場合すぐに診察が受けられないこと、住居を遠く離れて治療を行わなければならないことなどが大きな問題となっています。さらに近年の日本では高齢化も見逃せない問題の1つ。僻地に住む高齢者にとって、治療のために長距離の移動をしたり、慣れない土地での生活は大きな負担となってしまうのです。
そういった問題を少しでも改善しようとして行われているのが「僻地医療」です。これは、僻地診療所と近くの大きな病院が協力をして診察や治療を行うといもの。
僻地診療所では対応しきれない病気やケガなどは大きな病院で行ったり、専門医を紹介したりするという連携という形で対策がとられています。
また、僻地診療所で人手不足があった場合には、連携先の大きな病院から医師を派遣したり、自宅療養が必要な患者のもとへ専門医を訪問させたり、ドクターヘリを出動させることもあるようです。こういった僻地診療所と大きな病院が協力をして医療を行うことを総称して「僻地医療」といいます。
とはいえ、高度な設備が整った病院での長期治療が必要だったり、専門的な検査が欠かせないとなると、自宅診察や専門医の派遣だけでは対応できないことがあります。そのような場合には、患者本人が大きな病院へ足を運ばざるを得ません。僻地医療が進んでいても、こういった問題を解決していくのは少々困難ともいえるでしょう。
プライマリケア医とは?
このようにたくさんの問題を抱える僻地医療の現場では、どんな分野の病気やケガにでも対応できる総合的な知識と技術を持つプライマリケア医が必要とされています。
もちろん、プライマリケア医が必要とされるのは僻地に限ったことではありませんが、小さな診療所をごく少人数、または1人で担当するとなると、内科や外科だけでなく、小児科や眼科、皮膚科など幅広くの分野に精通する医師であることが求められるのです。
しかし、交通の便が悪い僻地への勤務を希望する医師はとても少ないのが現状。業務内容の負担も大きく、休みが取れないという大きな点などが解決しない限り、僻地医療の問題解決は遠くなるでしょう。
現在の僻地医療には問題点がたくさんありますが、地域とのつながりや住民との深い絆を作ることができるという魅力もあります。最近では、研修医に対して僻地医療に関しての魅力や現象を紹介する研修も行われるようになっており、僻地医療の問題解決への歩みが進められています。僻地医療に魅力を感じるプライマリケア医が増えることを願いましょう。