第2回「堀口雅子先生」産前産後に休暇を取得して復帰したから産休取得の先駆者

—医師になった経緯を

私はね、体が弱かったので、医者との接点が多かったのでしょう,幼い時から医者を目指していました。いただいた注射器に水を入れ人形の腕にブツリとやって遊んでいました。さて受験という時、女が医者になっても仕方ないとの声。止む無く薬学へ進み、卒後はホルモン研究の道を選びました。しかし、あきらめきれず医学部に入りなおし、30歳で卒業。専門は産婦人科を選びました。女性である特性が患者さんの理解に役立つ、ホルモンの研究が生かされるという思いからです。

当時は完全な男社会で、女性の入学に門戸を閉ざしていた大学は沢山ありました。診療も、男医の目で人間=男として診療し、性差医療という意識のないものでした。だから女医の必要もなかったのでしょう。女は医者に「なれない」「はいれない」と偏見や反対があり医師も性差医療についても分かっていなかった時代でした。悔しかったですね。でも何とか潜り込んで、今日にー。

—出産時の年齢とご自身の出産について

医者としてのキャリアを8年積んで結婚したのは38歳。第一子は39歳、第二子は42歳で超高齢出産経験者です。うちは二人とも産婦人科医ですから、子宮筋腫などなくて問題がないとわかっていたので安心して出産できました。(内緒話:実は、少し自信過剰、長男の時は無理をして早産未熟児35週1日、2460gでした、いろいろ教訓を得ました。)やはり、結婚に適齢期はないけど妊娠・出産には適齢期があるわね。周囲のサポートを得られれば、早めに産んでキャリアを積んでいく選択も賛成だわ。修業中ゆえ、失うことの心配もあるけれど、妊娠・出産・育児のプラス面は多いと思う。

—産休取得期間について。

産前産後に休暇を取得して復帰したので産休取得についても先駆者といえますが、適当な保育園が見つからず家で待機中は,夜人知れず枕を濡らしたこともありました。私の字引に休職という言葉はなかったのですから。夜間の不眠が一番大変。オムツを替えてもお乳をあげても寝てくれない、首を絞めたくなる気持ち分りました。勤務が始まると不眠の疲れとの戦いでしたね。パートナーの協力は大切、非協力は二人の将来に響きます。学童保育がまだない時期で、子どもが帰ったときに空白をうずめてくれる人、迎えてくれる人子どもの周囲にどんな大人をつけるかにはすごく配慮して、子供が小さいときは女子大学生に、思春期になると男子大学生に家庭教師をお願いしていました。二人とも男児でしたから。

—今だから笑える、子育て中のハプニングをひとつ。

主人がお迎えの日だと思っていたんですが、家に帰ってみたら親は二人とも揃っているのに子どもがいないのよ。保育園から連れて帰るのをつい忘れてしまったのね。あわてて迎えにいった、なんてこともあったわね。

—これから、子どもがほしいと考えている女性医師にひとこと。

妊娠・出産には医学的に適齢期があると思う。妊娠率・流産率・母体の合併症等を考えると、30代で産みあげて欲しい。更に、高齢出産により生まれた子は、将来働き盛りに、老親の介護・子育て・仕事の重積する苦渋を強いられることになります。先のことまで一寸考えて、産む時期を決めたほうがいい。

(産婦人科医として)子供は一人より二人以上いた方がいいとおもう。一人だと全エネルギーを注ぐことになるでしょう。子供こそいい迷惑。二人いれば留守番も将来も心強い。また、子育ての中で人間は一人一人違うことがよく分るの。高齢だからと、出産後すぐ次を妊娠しようというのは賛成しかねるわ。最低1年は待ったほうがいい。次の妊娠が無事とは限らない。流産で幼い乳幼子を置いて入院だってありうる。1年くらいあくと、他人にも預けられるし、いうことも聞いてくれますよ。

出産・育児・介護にあたり、仕事を続けるかどうかは「続けよう」という意思が必要だし、重要なこと。その時志がしっかりしていた人が残っていると思うわ。

「女がいるから男にしわ寄せがくる」なんていう男性医師もいるけれど、根本から違う。人間の半分は女性なんですから。

堀口雅子先生 履歴

*産婦人科医(群馬大学医学部卒)
*東京大学医学部産科婦人科学教室に入局、愛育病院・がんセンター・三井記念病院、その他にて研修
*国家公務員共済組合連合会・虎の門病院に約30年勤務(定年退職+非常勤)。
*現在、女性成人病クリニック(更年期専門外来)、主婦会館クリニック(からだと心の診療室)、青山・渋谷メデイカルクリニックにて診療。
*私立女子中学・高校校医
*看護系大学・学校、非常勤講師
*千代田区教育委員
*思春期から更年期までの「からだとこころの問題」に関心を持ち啓蒙活動を続けている。



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